大阪都市農業情報ポータルサイト 大阪で農業っておもろいやん!

トップ > お知らせ・ニュース > 加工によって生まれる、 野菜の新たな楽しみ方

お知らせ・ニュース記事

LINEで送る
Pocket

【コラボde対談】大阪産野菜によって、「食」の面から持続可能な社会作りを

(プロフィール)

◆株式会社てりとりー 代表取締役 福本浩幸(ふくもと・ひろゆき)さん
現在、沖縄料理居酒屋や日本酒バルなど計11店舗を経営。その中の一つ、「梅田チューハイ35」は2018年4月にオープンしたチューハイ専門店。神戸大学卒業後、酒造メーカーで勤務していた経験を活かし、超強炭酸の焼酎「純」35度をベースに「沖縄塩レモンチューハイ」「加賀棒ほうじ茶ハイ」など常時30種ものチューハイを提供する。

 

◆藤井貫司(ふじい・かんじ)さん
サラリーマン経験を経て、2012年に羽曳野市の「藤井農園」に就農。イチジク、トマトを主に、季節の果物、野菜を栽培する。特にイチジクは20年以上前からハウス加温栽培を開始。現在は温度管理できるハウスの強みを生かし、露地物が出回る8~10月に先駆け、5~7月に出荷。養液栽培によって周年出荷を目指している。

 

品質、物流の面から評価

福本さん:「藤井農園の野菜や果物を使って新しいチューハイを作ろう」という話が持ち上がったのは、2018年8月頃。「梅田チューハイ35」では、以前から和歌山県産のレモンなど各地の果物を扱っていたので、藤井農園ともいつか果実チューハイを作りたいと思っていたんです。

 

藤井さん:大学の後輩である福本さんとは以前から懇意にしており、私が福本さんの経営するお店に足を運んだり、逆に福本さんがうちの農園に遊びにきてくれたりしています。 このポテトチップスを作った時もそう。当園では、野菜を栽培する傍ら、一般の消費者を対象に「農業体験」を開き、栽培、収穫を通して農業を身近に感じられる場を提供しています。この時も「じゃがフェス」と銘打ち、みんなでじゃがいもを栽培、収穫し、最終的にポテトチップスにする企画に、福本さんがご家族で参加してくれたんです。

福本さん:はい、子どもたちと参加させてもらいました。普段、食材を仕入れる際、品質と物流を基準に選定するのですが、今回は「農業体験」で何度も農園に足を運び、藤井さんが栽培される姿を見ているだけに品質への信頼は大きかったです。やはり、顔が見える関係は重要で、生産から消費の過程を追跡する“トレーサビリティ”のように、自分が見たものや、体験したものはこちらも売り甲斐を感じますから。 それともう一つ、物流に関しても、大阪産の野菜は消費地まで距離が近く、朝採ったイチジクを収穫の翌日には提供することができます。その分、新鮮で完熟のおいしい状態でお客様に味わっていただくことができました。

 

藤井さん:「地の利を生かす」というのは、私も大阪で農業をする以上、意識していることです。距離が近い分、鮮度を保ったままお客さんに商品を届けられますし、逆にお客さんに畑へ来てもらい、栽培風景を見ていただくこともできます。

 

「イチジクチューハイ」によって嬉しい相乗効果が

福本さん:「生イチジクチューハイ」(690円/税込)には、露地物のイチジクを使用しました。スーパーで販売されるイチジクと違って、藤井農園のイチジクは甘みと旨みが強いので、大ぶりな実を1/2個贅沢に使い、ゴロッとサイコロ状にカットしチューハイにたっぷり浮かべました。イメージは「食べるチューハイ」です。

 

藤井さん:私もいただきましたが、めちゃくちゃ美味しかったです!大きくカットされたイチジクの果肉から果汁が溢れ、強炭酸の「純」とのバランスが絶妙。隠し味に効かせたパッションフルーツのシロップも果実の甘みを一層際立たせてくれました。

 

福本さん:たくさんの方に飲んでいただきたかったので、8~10月の販売期間中は店内のメニューに「藤井農園直送!」と大きく書いてアピールし、提供の際も農園やイチジクの栄養価を丁寧にご説明しました。お客さんの反応は上々でしたよ。意外と男性の人気が高く、何杯も注文される方もいました。
藤井農園でもSNSでチューハイのことをご紹介くださったので、「藤井さんのSNSを見てきました!」「イチジクのチューハイ、まだ提供していますか?」と訪ねてくださる方もありました。

 

藤井さん:私自身、普段から足を運び、店の事を知っていたので、SNSのフォロワーにもぜひ行ってもらいたいと思いました。それに、農園にも「梅田チューハイ35でチューハイを飲んで、イチジクを購入したくなった」と発注してくださる方がありました。

 

好評に応えて、第2弾トマトチューハイ誕生

福本さん:イチジクに続き、10~12月には第2弾となる「フルーツトマトチューハイ」(790円 税込)を販売しました。藤井農園のトマトは甘くておいしいので、以前から絶対にチューハイに合うと思っていたんですよ。

 

藤井さん:うちは露地とハウス、2種類のトマトを栽培しており、今回使ったのはハウス栽培の「フルティカ」という品種です。畑に地植えするのではなく一株ずつポットに植え、チューブで自動的に給水しています。
もともとトマトは水分量が味に大きく影響する野菜。適量なら甘くなりますが、水が多すぎたり足りなかったりすると味が落ちてしまうため、必要に応じてこまめに水をやる必要があるのです。ただ、人の手で行うには限界がありますから、当園ではハウス内にセンサーを設置し日射量を読み取りながら、適切な水分量を自動調整し、常にトマトを最適な状態に保っています。

 

福本さん:藤井農園のトマト「フルティカ」は糖度7~8度と甘みが強く、果皮が薄いので、実も果皮も丸ごとスロージューサーに入れじっくり搾り出しました。普通のジューサーに比べ旨みが凝縮される分、トマト本来の味をそのまま楽しめる味に仕上がっています。

 

藤井さん:たしかに、飲みやすくておいしかったです!他店で飲むトマトチューハイは、市販のトマトジュースを使っているところが多いですが、今回の「フルーツトマトチューハイ」は、当園のトマトの甘みを本当に良く引き出してくれました。

 

福本さん:お客様からも好評で「こんなにおいしいトマトチューハイは初めて!」「他所のトマトチューハイは苦手だけど、これなら飲める!」と学生さんから40~60代のビジネスマンまで幅広い年齢層から人気がありした。
現在もトマトの収穫期の4~6月と10~12月に2回提供し、10~12月のイチジクチューハイとあわせて当店の季節の定番メニューになっています。

 

藤井さん:僕ら農家は、基本的にトマトやイチジクは「生でそのまま食べる」イメージですが、今回のようにチューハイに加工してもらうことで野菜や果物の新しい楽しみ方を作ってもらえてありがたいです。

 

福本さん:僕らの仕事は、もともとおいしいトマトに、いかに付加価値をつけて提供するかということ。市販のイチジクの方が安く仕入れられますが、それでは付加価値を付けることはできません。ブランド力の高い商品を使うからこそ、付加価値をつけて提供できるのです。 特に昨今は、コロナ禍の影響で外食の機会が極端に減った分、みんな「どうせ食べるからおいしいものを」という意識が強くなっています。私たち外食産業は、これまで以上に付加価値を意識する必要性があるでしょう。

 

「加工品」にすることで、さらに「農園に行く」価値を高める

福本さん:今後は、例えば店内のテーブルにQRコードを表示し、チューハイを飲んでイチジクに興味を持った方が藤井農園のECサイトにアクセスできる仕組みを作る、ということもできるでしょう。今や、アパレル業界では店舗で商品を確認し注文はWEBで行うのが当たり前の時代。我々外食産業も、デジタル時代にふさわしいビジネスを取り入れていかなければなりません。

 

藤井さん:そういった仕組みができるのであれば、我々農家にとっては広告・宣伝にもなります。

 

福本さん:「チューハイを飲みに来ているお客さんが、果実を購入するかどうか」についてはただ売っていますではお客様には魅力が伝わりづらいため、お客様がどうすれば買いたいと思えるかもう少し熟慮が必要ですが、実際に飲食店で物販をされているところもありますから、可能性は十分あるはずです。例えばイチジクチューハイを提供するだけではなく、イチジクで作ったビールやチョコレートを店頭で販売し、オンラインショップでも展開するとか。僕らはメーカーではありませんが、そういったものを企画し加工することはできますから。

 

藤井さん:イチジクビールをはじめ、「加工」の重要性は私も感じているところです。当園では、これまで「野菜+体験」を掲げてきましたが、今後は、自分で栽培、収穫した作物をポテトチップスやビールのような「加工品」に変えることで、さらに「農園に来てもらう」価値を高めていきたいと思っています。
いずれは、USJのようなエンターテインメント施設と同じくらいまで価値を底上げするのが目標。例えば、USJに行く感覚で畑に遊びに来てもらい、一日みんなでサツマイモを収穫し焼き芋を食べ、最後に加工品をお土産に持って帰る、など。今後も福本さんには、加工や企画について色々と協力させてもらいたいです。

LINEで送る
Pocket

スペシャルコンテンツ