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まるちゃんGrape

他業種からの新規就農し、地域連携、農福連携、次世代の育成など、太子町のブドウ農園で精力的に活動するまるちゃんGrapeの代表、丸谷さんにお話を伺いました。

 

■建築業界から未知の農業へ!

軽自動車1台がやっと通れる農道を上がっていったところに、「まるちゃんGrape」のブドウ園があります。デラウェア、翡翠(ひすい)、巨峰(きょほう)、ピオーネ、シャインマスカットの5品種を中心にブドウを栽培しているのが、他業種から就農して3年目になる代表の丸谷さんです。

 

前職は、建築関係で従業員10名ほどの会社の経営者。景気が傾いてきて、従業員に迷惑がかからないうちにと会社をたたむことを決意しました。

 

「それまで全く興味はなかったんですよ」という丸谷さんが農業を始めようと思ったきっかけは知的障がいを持つ息子さんでした。支援学校に通う息子さんが土をいじるのが好きだと先生から聞いたことから、「農業なら時間の融通が利いて生活のサポートもできるのでは?」と興味を持ち、行動を開始しました。

 

■農業も技術職もなにより基礎が大事!

まず、農業支援をしている難波のハローワークで情報収集からスタートし、無農薬栽培の農家などで修業の日々を重ねながら、太子町のブドウにたどり着きました。

 

技術職で培った経験から、基礎がなにより重要と考えていた丸谷さんは、2年間収入もほとんどない状態で先輩農家からブドウ栽培のイロハを学びました。高齢になったオーナーからブドウ農園を借り受けて満を持して独立したのは、修業から3年目のことでした。

 

「農業は、毎年1年生。あぐらをかいて過ごしてはいけないと思っています」。高温や虫、アライグマの被害など、独立してからの失敗もたくさん経験しました。「パック詰めするまで安心できない」という農業の厳しさを実感しながら、いつも学ぶ姿勢を忘れない丸谷さんは、3年目を迎えてミスが減ってきたと実感しています。

 

■農家の時間の使い方とは?

「JAさんの支援もあって、農産物直販売や道の駅など販路も拡大しています。収入の7割はJAさん経由かな」と話す丸谷さん。丸福珈琲店とのコラボ企画にも声がかかるなど、軌道に乗ってきています。

 

7月から8月まで出荷のピークを迎えるまるちゃんGrapeの1日のスケジュールを伺うと、スタートはまだ涼しい朝5時。収穫してパック詰めを行います。出荷先への振り分けを準備し、7時から各店舗に配送。9時ごろに戻ってきて次の日の準備をして15時くらいに帰宅します。

 

これは支援学校に通う息子さんのサポートを優先した働き方で、それができるところも農業の魅力のひとつだと丸谷さんは感じています。

 

■地域と連携して太子町をアピール!

修業期間を通じて地域に溶け込み、先輩農家さんと信頼関係を築いてきた丸谷さん。費用がかさむ初期投資にも資材を提供してもらうなど、周囲のサポートに支えられたと話します。「その分、力仕事で恩返ししています」と話し、地域との連携を深めています。

そんな丸谷さんの作るブドウの評判が上がることで、太子町役場とのつながりも生まれました。いずれはふるさと納税の返礼品にもという話も進行していて、「生食は無理だけど、ジェラートなら」と新しい企画が進行中。ブドウのまちとして太子町をアピールする役割も期待されています。

 

■農福連携で社会に貢献する農業を

もうひとつ、丸谷さんが力をいれているのが、農業と福祉が連携する「農福連携」です。すでに出荷用の箱を組み立てる作業などの取り組みはスタートしていますが、さらに進展させたいと考えています。

 

柏原のブドウ園ではほ場作業を行っていたり、直売所の清掃を依頼したりするなど、連携の事例は増えているようです。作業所にとっては収入になること、農家にとっては低コストで作業を依頼できること、そして障がいのある人が社会に役立てる機会になること。息子さんがいるからこそ、農業と福祉の親和性を実感している丸谷さんです。

 

「ジャムや干しブドウづくりなどの作業を、作業所さんで対応できないかを相談しているところです」と、ブドウを通じて農福連携の推進に向けて余念がありません。

 

■農業を未来につなぐ挑戦!

「JAさんの無料職業紹介経由で若手の子が来てくれたんです」という丸谷さんを、この日手伝っていたのは、26歳の山崎さん。朝からすでにシャツを4枚着替えたと笑顔で話してくれました。

 

高齢化して体力的に厳しくなっていく農家をサポートする役割も担う丸谷さんにとって、若手を育てることも重要なミッション。温度管理をスマホと連携したり、出荷場にエアコンを設置したり、他の農家をスポットで手伝う時には時給制にするなど、働きやすい環境を整えることにも注力しています。


「実践に加えて教科書で学ぶ機会も重要であり、まずは基礎を学んでほしいと思っています」と、次世代の育成にもトライしています。

 

また、ブドウだけでなく、年間を通じた展開を考えているという丸谷さん。いちじく、メロン、はっさくなどの栽培も検討しているほか、加工品やジェラートづくりで、まるちゃんGrapeの未来図を描いています。

 

■新規就農を目指す方へのメッセージ

熱意だけでは長く続けることができない仕事です。でも、いいブドウができて「丸谷さんところのブドウは本当においしかった」という言葉をいただく時はすごくうれしくて、農業をやってよかったと思います。

 

収入面など多くの不安要素がありますが、JAさん、ハローワーク、行政など支援してくれるところはたくさんあります。国や自治体の助成金を活用しながら活動していくことが大事です。

 

自分なりの働き方ができて、挑戦しがいのある仕事です。まず情報収集から始めてみてください。

 


[取材ご協力]

「まるちゃんGrape」代表 丸谷 充さん

 

他業種から就農し、南河内郡太子町の圃場でデラウェア、翡翠(ひすい)、巨峰(きょほう)、ピオーネ、シャインマスカットの5品種を中心にブドウを栽培。道の駅やJAの産直市場などで販売しており、丸福珈琲店とJAのコラボメニューにもブドウを出荷。

 

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