大阪都市農業情報ポータルサイト

Tweet

Pocket

稲わら堆肥で、ふかふかの土

畑の土は、ふかふかだ。化学肥料の代わりに入れているのは自家製の稲わら堆肥。三浦農園の田んぼでとれた米の稲わらに、堺市の北尻牧場から届く牛糞などの有機物で発酵させた堆肥を混ぜる。「北尻牧場とのご縁は、大阪府の女性農家の集まりで、母親同士が友達になったことがきっかけです」。

IoTを、楽しむ

IoT*などの最先端技術も積極的に取り入れている。導入しているのは、地温、水分量、湿度、ＥＣ、二酸化炭素濃度、飽差（ほうさ）**などのほ場環境データが見える「e-kakashi」や自走式の代車「アグビー」。

アグビーはいったん刷りこみ作業を行うと、ワイヤレスで後ろをぴったり追従しながら、重い荷物を運んでくれる台車である。畑の状態や収穫量を計測し、そのデータで将来の収穫量の予測も行えるのだという。

実際に見せてもらった。ゆっくりと歩く淳さんの後をぴったりとくっついて動くアグビー。淳さんが止まるとアグビーも止まる。なんとも可愛い相棒であった。

* IoTとは、Internet of Thingsの略。モノのインターネットと訳される。モノ同士が繋がり、作用しあうしくみ。
** 飽差とは、1立方メートルの空気が追加で何グラムの水分を含むことができるかを示す値。湿度が同じでも、気温によってグラム値は異なる。水分の乾きやすさの指標。

生物多様性、豊かな三浦農園

三浦農園では水なす以外にもたくさんの作物を育てている。ちょうど収穫最盛期を迎えていたのは、貝塚早生という平たいたまねぎ。畑を歩かせてもらうと、麦、オカワカメ、クキレタスなど珍しいものにも遭遇した。

もともと農業が大好きだったという淳さん。家業であった農業を継ぐことに迷いはなかったという。現役時代にサラリーマンでもあった父は、定年後、兼業から専業に。

思春期に「農業なんて嫌」と思ったこともある姉の麻衣さんは、当時サラリーマンの真生さんと結婚したが、子供が生まれて考えが一転。実家の農産物の新鮮さと美味しさ、農業の魅力を再認識する。

「農業をこどもが憧れる職業にしたい」という思いから、三浦農園の一員となった。その後、夫の真生さんも三浦農園の扉をたたくことになる。

真生さんはサラリーマン時代、自動車業界にいた。「部品を組み立てて作る仕事です。農業は種から芽が出て、葉っぱがつき、花が咲き、実が出来る。自然の力を借りながら、自分で育てたものを売るのは楽しいです」。真生さんは脱サラ後、大阪府の農業大学校に２年間通う。基礎から農業を学び、三浦農園に加わった。

やる人が、楽しそうに見える農業をめざす

大阪を襲った台風（平成30年の台風21号）では他の農家同様、三浦農園でもハウスが全壊したが、家族で一致団結して乗り越えた。「取引先やお客様をはじめ、多くの方に助けて頂き早期再建することが出来ました」。

地域のあちこちに点在する農地では、周囲の住民からトラクターの音や肥料の臭いなどでクレームがこないよう、いろいろと気を遣わないといけないこともある。

「都市化がすすんだ大阪での農業は、大変なこともありますけど、開拓すれば販路はいくらでもあり、やり甲斐があります。自分が小さい頃、おじいちゃんとおばあちゃんが楽しそうにやっていた農業に魅力を感じたように、僕も農業の面白さをもっとたくさんの人に伝えていきたいと思っています」という淳さん。

いろいろな種類の農産物、害虫から野菜を守る天敵や微生物も多種多様。みなさん元気で明るくて素敵な四世代健在の大家族。三浦農園の生物多様性もまた実に豊かであった。

取材日　2019／5／24

記　事　中塚華奈

写　真　柴田久子

Tweet

Pocket