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トップ > お知らせ・ニュース > 「農業を通じて21世紀の里山を創造したい!」|志を持ってホップ生産に挑む新規就農の農家

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大島さんの農園風景

「今という時代に必要とされる里山の風景をつくりたい」と語るのは、枚方市の穂谷地区で新規就農した『ひらかた独歩ふぁーむ』代表の大島さん。イタリアントマトを中心に小規模多品目の生産に取り組んでいる農家さんで、「農業を通じて21世紀の里山を創造する」というコンセプトを掲げ、地域とのつながりを大切にして里山を守り育てる農業を目指す中、地区の名前を冠したクラフトビールの原材料となるホップつくりにも挑戦しています。非農家からの就農、地域とのつながりなど、都市型農業に対する想いを伺いました。

 

■非農家から新規就農したきっかけは超シンプル!

ご両親は教師で、農業は身近なものではなかったという大島さん。「食べることが好きで、料理が好き。それで食べ物ってどう作られているんだろうかと考えたんです」。そんなシンプルな好奇心が農業に興味を持つきっかけでした。学校給食関係の会社に勤める中で、より本質的に「食」と関わりたいと思うようになり、新規就農という人生の大きな決断をしました。「計算することよりもまずできるところからやってみるというスタンスで、手探りしながら少しずつ前進した感じですね」と、就農までの道を振り返ります。

 

■農家での手伝いから信頼を得て農地探しもスムーズに

有機農業に関心があったという大島さん。就農への糸口となったのは、地元食材にこだわった料理を提供する枚方市の有名な農家レストランでした。父の知り合いであるオーナーから穂谷地区で有機栽培をしている農家を紹介してもらい、その手伝いをするところからスタート。

そこから先輩農家と交流が広がる中で、高齢になり手がかけられなくなった畑を荒らしたくないという農家から土地を借りることができました。非農家から新規で農業を始めるにあたって、まず大きなハードルとなるのが農地探しです。大島さんは地域との信頼関係を築くことでスムーズにハードルを越え、現在では近隣農家から借り受けた2ヘクタールの農地で営農しています。

 

■第2回「おおさかNo-1グランプリ」受賞しました!

「特色ある農業をしたいと考えていて、やりたいことをまとめてプレゼンしたらグランプリをいただきました(笑)」。実は大島さんは、JAグループ大阪と大阪府が若手農業者のチャレンジ意欲を喚起する目的で開催された経営強化プランのコンテストの「おおさかNo-1グランプリ」の第2回受賞者。

グランプリの情報はこちらから

タイトルは『イタリアントマトの「ソバージュ栽培」を活用した枚方市「穂谷の里山」からのオモロイ都市農業再生プラン!』。目指す農業のかたちをまとめたものが評価されたことは、その後の進む方向の指針となりました。作業場にはその時のパネルや自身の写真が掲載されたポスターも残されています。

 

■枚方発のクラフトビールで地域を盛り上げるホップ栽培

地域とのつながりを大切に考える大島さんが、仲間とともに地域を盛り上げたいという志を持って2年前から手がけているのがホップ栽培です。「穂谷産のホップを使ったクラフトビールをつくりたいという事業者からオファーがあり、挑戦してみることにしました」。栽培方法を指導してくれる山梨県の農家の紹介を受け、140株の苗を栽培して、2年目の今年は初年度に比べて約5倍の収穫量となりました!

 

試行錯誤しながら育てたホップは、(株)カンパイカンパニーによって「THE HOTANI CRAFT」という名のクラフトビールとして世の中に登場。2022年は「穂谷ホップ収穫祭」が開催され、ホップ生産者として収穫体験イベントも行いました。予約席数は早々に完売し、東京からの来場客もあったというほどの盛況ぶりで、手応えを感じるイベントとなりました。

ビールの詳細情報・オンラインショップはこちらから

 

■ホップ栽培の挑戦から見えてきた地域と農業の関わり

「ホップはやらないという選択肢もあったんですが、挑戦したことでいろいろ見えてくることがありました」。ホップは植え付けから収穫までが短期間のため、肥料、病気予防、除草など適期に作業する必要があるといった栽培での苦労はあるものの、7月には収穫が終わるので台風の被害を心配しなくて良いという面もあります。

 

「広い面積でないと採算ベースには乗らないという現実もありますが、地元産ホップを使ったビールをきっかけに、地元の農業を知り、応援してくれる人が増えれば」と話す大島さん。単なる生産者という立ち位置でなく、地域活性化を目指して同じ志を持つ仲間として関わっていきたいと考えています。

 

近くのゴルフ場の社長が地元産ホップを使用したクラフトビールに興味を持って、今回のイベントでも送迎バスを出すなど、積極的に参画。それぞれが強みを持ち寄って活かすことで、地域全体が盛り上がることを実感した大島さん。この地ならではの素材を作り、「食」を生み出し、それを楽しむ人を増やしていく。そこにストーリーのある農業のかたちを見つけたようです。

 

■農業は地域の景色をつくることができる仕事!

今回のホップづくりを決意したのは、増えてきた農地の使い方を考えていたタイミングだったことも理由の一つ。高齢となって手が回らなくなってきて大切な農地を信頼できる人に任せたいという人が増えていて、大島さんが管理する農地も増えてきました。

 

「農地を貸すとお声かけいただけることがありがたいと思っています」と話す大島さん。インタビュー中にも近隣の先輩農家さんが来て立ち話に。帰りには大島さんが収穫した小玉すいかをお裾分け。地域とのつながりを大切にしている様子を垣間見ることができました。

 

「農業って景色をつくることができる仕事だと思います」。四季の変化を感じる風景をつくりだす農業。大阪という都市にもこういった場所があることの価値を伝えられるのは意義があることだという想いで、農業に取り組んでいます。

 

■地域で多様な農業の担い手が活躍できる下地づくりを

「気持ちを込めていい野菜を作って届けるのが大前提です。それだけで終わらず、この土地で農業をすることに意義を感じ、やりがいを持って農業を続けることが誇りになると思っています」。点在する畑の特性を把握し、植え付ける作物を決めて行くことも重要な仕事。「この畑でこれを作って、その後にあれを植えて、と絵を描いている感じ。イメージ通りいくと楽しいし、失敗したら次はうまくいくように考えます」。これが大島さんの農業の楽しみ方です。

 

「農地が次世代につながり、高齢の先輩農家が安心してリタイアできるよう、地域で多様な農業の担い手が活躍できる下地づくりをしたい」。就農までの助走期間に自身の体験が農家を目指す人の役に立てるようにと心がけている大島さん。就農までに決まった形はなく、農家それぞれのスタイルで多様な農業ができるということを体現しています。

 

作業室のホワイトボードに書かれた本日のスケジュールは、書き出すことによってスタッフと情報を共有し、それぞれが能動的に動けるようにするためのもの。でも、予定通りにならないのもまた農業の醍醐味。困難をバネにして立ち上がれば、失敗を次に活かせる仕事です。

 

■「好きでやってることだから、楽しめなくなったら終わり」

「農業を知らずに生きる死ぬを語るのは不誠実だと思っています」。たくさんの生命の上に自分の命をつないでいることに気づき、「食べる」ということが全ての根本にあると理解することが大事だと考えています。

 

小規模多品種で行う農業はいつも忙しく、採算ベースに乗りにくい一面もあり、「家族との時間を増やし、カミさんと旅行できるゆとりをつくりたい」との願望も。でも、4歳の娘さんと一緒にひまわりを育てたり、小さい時から出荷する野菜の袋にシールを貼るなど、農家ならではの一体感もあります。

 

「好きでやってることだから、楽しめなくなったら終わり」ときっぱり話す大島さん。それぞれがやりたいカタチの農業をすればいい、と新たに農業を目指す後輩たちの背中を押すのも自分の役割だと心得ています。農業と地域の未来を描きながら、シルバーの軽トラであちこちの畑を見て回る忙しい日々は続きます。

 


[取材ご協力先]

ひらかた独歩ふぁーむ【枚方市】

代表 大島哲平さん

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