畑に立つ、のぼり旗には「生きていくために必要な食べ物について考えてみませんか?」とある。創業は、2008年。花野眞典さん(40)は岸和田市土生滝町(はぶたきちょう)で、新規就農者としての一歩を踏み出した。
農家の高齢化、後継者不足は、大阪にあっても伝えられる通り。休耕地は増え、世代交代が急がれるが、若手農家の絶対数は不足している。そこで「食と人の架け橋」になろうと、花野さんはHANANOファーム「くじらのペンギンハウス」を立ち上げた。
コンサル&週末菜園から、専業農家へ
農業とは無縁の生活だった。眞典さんは、中学生より本格的にパソコン教育を受け、大学卒業後はコンサルタント会社に勤務。パソコンインストラクターを経て、教育事業部の商品開発課長として働く。
そんなある日、ニュースで国内の食品偽装事件を目にした。「自分が無意識に食べている野菜は、一体どのように育つんだろう」。気になると探究せずにはいられない性分だ。家のベランダで、野菜を栽培してみた。意外と簡単に収穫できた。続いて、知り合いの畑を借りた。育てた作物を直売所に出荷すると、スイカ3玉が即完売した。嬉しさと同時に、「農業という仕事」の存在を初めて意識した。
「調べると、日本の農業は幾つかの問題を抱えていると知ったんです。これ以上、状況を悪化させないために農業を盛り上げなければと思うようになりました」と、眞典さん。2年間の農業アルバイトを経て、独立。専業農業の道を歩み始めます。
新鮮な地元野菜をアピール
入り口の大きな木は農園のシンボル。JR阪和線東岸和田駅から車で15分。市街地に近く、1km先にJAいずみの農産物直売所「愛彩ランド」がある、この立地を気に入った。のどかな風景が広がる畑で、約30品種の季節野菜を栽培する。夏にはナス、トマト、ズッキーニ、空芯菜やバジル。冬には大根、にんじん、白菜、ほうれん草などの葉物野菜を育てる。
できる限り、朝採れを出荷。収穫したてのリーフレタスは、葉先までパリパリだ。「都市農業ならではの地の利を活かして、スーパーよりも安く、新鮮であることを強みにしています」と笑顔を見せる。農業と縁遠かったからこそ、買い手の気持ちがよく分かるのだ。
2014年には、認証審査組織「アグリ大阪」を設立。府内農産物の品質向上と普及に力を入れる。「大阪産.jp」と書かれたロゴシールは自作のデザイン。前職で鍛えたパソコンスキルが、役立っている。