見晴らし抜群、観光農園
大阪市内から、車で約1時間。千早赤阪村へ向かう国道309号線沿いを進むと「やまびこ園」と書かれたみかん色の看板が視界に入ってきた。
「あと1,200m」「あと1km」「あと500m」「あと200m」と、親切すぎる案内に誘導され、車を走らせる。細い山道にも不安なく、やまびこ園へ無事到着。ここは大阪の南、富田林の静かな山に囲まれた総面積3ヘクタールの観光農園である。
春は、桜が咲き誇る。初夏には、みかんの花が芳香を放ち、藤棚には紫色の可憐な花が垂れ下がる。秋は、栗拾い(9月中旬から10月上旬)、さつまいも掘り(9月中旬から11月下旬)、みかん狩り(10月中旬から12月上旬)が楽しめる。
年間を通して、園内でバーベキューができる。真横まで車の乗り入れ可能で、食材運びも楽々だ。お弁当や木炭の持ち込みもOK。駐車スペースは150台完備である。
「今の時期は何にもないんですよぅ。寒いのでこちらへどうぞ」と招いてくれたのは、やまびこ園2代目の道籏正さん(58歳)。「あそこに見えているのが地上300メートル、日本一の超高層ビルあべのハルカスです。天気がいいと明石海峡大橋も見えるんですよ」。
標高250メートル、大阪平野が一望できる高台からの眺めは圧巻だ。観光農園の名にふさわしい抜群のロケーションである。
環境変化と、父の先見
やまびこ園は、正さんの父、義彦(よしひこ)さんが1973年に開園した。山に囲まれた立地と、義彦さんの名前の彦(ひこ)から「やまびこ園」と名付けた。
現存するたくさんのみかん蔵の数から、もとはみかん農家だったことがうかがえる。観光農園を開園するに至った背景には、バナナ(1963年)、レモン(1964年)、グレープフルーツ(1971年)の輸入自由化、生産過剰による温州みかんの価格低迷、そしてオレンジの輸入自由化(1991年)がある。環境変化への対処策として、国がみかんの栽培面積削減や生産果樹転換をすすめたのだ。
いま大阪において観光農園を営む農家は少なくない。しかし当時はまだ珍しく、義彦さんは時代の最先端を走っていたといえよう。
全天候型、バーベキュー場
やまびこ園は、みかん園と栗園、さつまいも畑に、バーベキュー場、カレーや豚汁が調理できる自炊場を併設する。自然に囲まれ、一日ゆっくり過ごすことができる。みかんは、園内において食べ放題。時間制限はなく、終日出入り可能だ。栗とさつまいもは、七輪で焼いて、その場で食べることもできる。
自然の木立の中にある「林間バーベキュー場(282席)」とテントの下の「七輪バーベキュー場(216席)」は、シーズン中は予約でいっぱいだ。近隣の幼稚園、小・中・高校や大学、会社の集まりなどで、毎年にぎわう。
「うちのバーベキュー場は、屋根があるので雨天でも開催できます。横なぐりの雨の日は、屋内へどうぞ。室内でも、バーベキューをしていただけます。ご安心ください」と、にっこり。室内バーベキューができる場所は3棟あり、450名まで収容可能。やまびこ園では、どんな天候でも、大人数でバーベキューができるのである。
畑によって、肥料は使い分けている。肥料には上質の骨粉や菜種粕などの有機肥料、微生物活性菌による発酵肥料などがある。みかんの味や品質は品評会で優秀賞を連続受賞したというお墨付きである。さつまいもは収穫したばかりでも美味しく食べられる品種「紅あずま」をセレクトしている。
富田林市内には、知る人ぞ知る菓子工房「yamao」がある。yamaoでは、スタッフが休日返上で栗拾いにやって来て、毎年やまびこ園とのコラボケーキ「栗ざんまいロール」や「和栗パウンド」を商品化している。