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去年より1本多く収穫できる、その1本を喜ぼう。

松岡利行さん

( まつおかとしゆき / 個人経営 )

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大学出たら、一度外で飯を食ってこい

「親の働く姿を見てきたんです。子どものころは機械化されてなくて、農作業は今より大変でした。大きくなって自分が手伝えば、両親が楽になるかなって思ってました」。

夏になると、両親と一緒に枝豆をむしっていたという。生まれも育ちも八尾の、松岡利行さん。夏は枝豆、冬は若ごぼうの栽培を手伝ってきた。代々続く専業農家に生まれた。利行さんは、農業を継ぐことに抵抗はなかったというが大学卒業後2年間、サラリーマン生活を経験する。

「卒業をひかえて呼び出しくらったんですよ、親に」。利行さんは、語る。「大学出たら、農業やりますっていうたら、一度外で飯を食ってきたらどうだといわれてね」。今ではサラリーマン経験がよかったと振り返る。「サラリーマンをしなかったら地域からまったく外に出なかったでしょうね」。

枝豆づくりは、土づくり

利行さんは、枝豆、小松菜を中心に栽培している。八尾の枝豆は、土づくりからはじまる。籾殻たい肥を仲間と一緒に作り、分け合っている。切磋琢磨できる「八尾堆肥研究会」の仲間である。この肥料がよかった、この栽培方法を試してみたなど、それぞれが情報の提供と協力をし合い、互いに刺激になっている。

収穫したばかりの枝豆の匂いを嗅いでみた。なんとも青い、枝豆のいい香りがして、ずっと嗅いでいたくなった。枝豆の花は小さく、白い。この小さな白い花の数だけ、枝豆になる。八尾の枝豆は、さやがぷっくり膨らみ、実が大きく、歯ごたえがある。

朝収穫、その日に市場へ

利行さんは、語る。「湯がいて食べるのが一番好きです。畑で実った枝豆を見ただけで、ビールが恋しくなります」。枝豆とビール、まさしく大阪府民の夏の風物詩である。収穫の適期は、2日から3日に限られる。鮮度が命だ。朝に収穫した枝豆は、その日のうちに市場へ出荷される。

収穫から出荷まで、すべて手作業で行われる。枝付きのまま出荷されるものもあるが、枝豆をひと房ずつむしる作業はかかせない。むしる作業の傍に立つと、またいい匂いがした。収穫は6月中旬から9月中旬まで続く。

賞をとるより、うれしかったこと

農業がだんだん面白くなってきた頃、利行さんは、農業フェスティバルの品評会に小松菜を出品し、府民賞を受賞する。しかし、この時の受賞はさほど嬉しくなかったそうだ。翌年また小松菜を出品し、当然入賞できると待っていたものの賞から外れてしまった。その翌年は小松菜、白菜、青ネギを出品する。青ネギが大阪府知事賞を受賞した。このときはさすがに嬉しかったそうなのだが、それより嬉しいことがあった。

品評会の後片付けをしている時、思いもかけないことに遭遇した。事務局の人が、受賞した青ネギを見て「この青ネギ、誰が作ったんやろう」と、周囲に聞いまわっているではないか。八尾の農家が作ったと聞いた事務局の人は言い出した。「そうか、八尾の農家が作ったんか。おれ、この青ネギ持って帰りたい」。

「その青ネギは明日、大阪府民のためのバザーに出すものだから、持って帰るのはあかん」。主催者側スタッフが言うと「それやったら、お金出すから売ってくれ。おれかて大阪府民や、買う権利はある。大阪でこんないい青ネギができるんやって、家族にみせてやりたい」と、事務局の人は応えたのである。八尾で農業をしていてよかったと思ったのは、今まで品評会でもらったどんな賞よりこの言葉だった。

学校給食、29校へ納品

現在、八尾市の学校給食にも力を入れ、市内29校へ野菜を納品している。また授業で八尾の農業を教材として取り上げており、利行さんは、小学校に出向いて授業を行い、農業体験の場として子どもたちを園場に招いている。

子どもたちが畑に行くようになると、おもしろい現象が起こった。給食の残菜率が下がったのだ。中には「利行さんと一緒に将来、農業をやりたい」と言う子どもも現れた。こんな嬉しいことはない。

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