泉州水なすの若手研究者の一面も
やり手の農業経営者と一見できる忠清さんだが、泉州水なすの歴史を探求する研究者でもある。
泉州水なすは、室町時代の教科書「庭訓往来(ていきんおうらい)」に原種の一つとされる「澤茄子(みつなす)」の記述があり、江戸時代には盛んに栽培されたといわれるほどその歴史は古い。
その「澤茄子」のほか「馬場なす」「樽井巾着なす」「上之郷なす」など、現在の「泉州水なす」には現存しないものを含めルーツといわれているものが多い。
いま食べられている泉州水なすはそれらを掛け合わせて選抜、統一されたもので、そのルーツを求めたくてベテラン生産者からの聞き取りも欠かさない。
戦後一昔前まで水なすの主流であったという「巾着型の水なす」は遠く新潟県に渡っていた。泉州にあったその「巾着型の水なす」は、新潟県において幻の茄子といわれる「十全なす」や「梨なす」の親にあたることから、新潟のナス農家とも親交を深めた。新潟に残っていたという巾着型の一昔前の水なすの里帰りを許しもらい、その栽培を通して泉州水なすの歴史を解き明かそうとしている。
北野農園のオススメの食べ方
泉州水なすの食べ方は、ぬか漬けの浅漬けが一番有名だが、漬かりすぎたものを塩出しして小エビと一緒に炊く「じゃこごうこ」も郷土料理として普及している。
このように地元泉州では、煮物でも炒め物でもおよそナス料理全般で水なすを使っているほど一般的なナスである。
北野農園では料理人や野菜ソムリエが考案した水なすレシピをホームページで公開している。
その中でも水なすを食べやすい大きさに切って生ハムで巻いて、オリーブオイルやハチミツをあしらった一皿をオススメするのは、忠清さんの幼馴染で同級生の妻、公美(さとみ)さん。辛口の白ワインに合うと聞き、水なすのイメージががらりと変わった。
一方、「週に一度は料理する」という忠清さんは、水なすのブツ切りと塩昆布を合わせるのがオススメ。昆布の旨み成分が水なすにマッチするらしく、こちらは冷やした純米酒が合いそうな予感。
地域に農家を増やしたい
当時、就農希望のサラリーマンであった伊藤正之さんを友人に紹介された。人を雇うつもりはもともと無かったが「どうしても」と懇願され手伝いにきてもらった。
暑くてハードな仕事、どうせ根をあげるだろうと思っていたが違った。会社勤めをしながら農業の手伝いをやりきった伊藤さんに出会ったことが、いまでは「優良雇用農家」と言われる北野農園のスタートになったのだろう。伊藤さんは北野農園での勤務を経て見事、貝塚市内で独立した。
「大規模になるのではなく地域全体に農家を増やしたい」という思いを持つ忠清さんは、独立を目指す就農希望者を積極的に採用している。採用にあたっては「大袈裟にいうと宇宙に一緒に行くなら誰と行くか?」という問いを基準にする。
「なにを知っている」「なにが出来る」といった知識量や経歴などではなく、職場でも近所でも(宇宙でも?)仲間としてうまくやっていくコミュニケーション能力を重視するというから面白い。「繊細な人ほど植物からの小さな発信を見逃さない」とも。
農作業、加工、受発注事務、WEB管理など幅広い業務に従事してもらっている。
またトイレ、シャワー、炊事場も完備した休憩場もつくるなど、忠清さんの経営者としての意気込みを強く感じた。
ぺたこい玉葱の話はまた
泉州には大阪を代表する「泉州たまねぎ」がある。
北野農園はこの元祖にあたる「泉州黄たまねぎ」の代表品種「貝塚極早生」を守り育てる農家でもある。貝塚極早生は、野球のボールやソフトボールのようなまん丸いタマネギではなくUFO型。地元では「ぺたこい玉葱」とも呼ばれる。
明治になってアメリカ産のタマネギをもとに栽培が始まり、さまざまな改良がされ、押しも押されもせぬ名産品になった泉州たまねぎの歴史や系譜は諸説あるようだ。このタマネギの研究に、また忠清さんの火が点いた。お話は尽きない。
そうこうしていると夕刻になったので、この泉州たまねぎ話は次の楽しみにすることにした。
取材日 2018/5/25
記 事 福島征二
写 真 ミヤギナミエ
- 氏名 / ふりがな
- 北野忠清 / きたのただきよ
- 組織名
- 北野農園 / 代表
- 役職
- 代表
- 主な生産作物
- 泉州水なす / 泉州たまねぎ
- 特徴
- 優良雇用農家
- 理念
- 時代に合った農業をする
- JAエリア
- JA大阪泉州
- 購入方法
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北野農園庭先直売所(南海貝塚駅下車東口から徒歩3分)
北野農園オンラインストア : https://kitakiyo.ocnk.net/
- ホームページ
- 北野農園 : http://www.kitanofarm.com/
- SNS
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北野農園
大阪府貝塚市貝塚173