7月下旬、大阪狭山市にほど近い河内長野市の北部にある「中村オリジナルぶどう園」にむかう道々で、「大野ぶどう」というのぼりを何本も目にした。大野地区は、丘陵地を活用して大正初期からぶどうの栽培が始まったとされ、大野地区で栽培されているぶどうを称して「大野ぶどう」と呼んでいる。ほとんどが直売所で売られており、夏の風物詩にもなっている。
「中村オリジナルぶどう園」も中村一俊さんの曽祖父の代から始めたぶどう栽培がもとになっている。
直売所で食べたことのないぶどうを試食
「中村オリジナルぶどう園」の直売所は大忙しで、お客さんがお目当てのぶどうを求めてひっきりなしにやってくる。
中に入って驚かされたのは、7月下旬だというのに、すでにシャインマスカットをはじめ、色とりどりの大粒ぶどうが出そろっていたことだ。加温栽培をしているので、ぶどうの中では一足早く収穫できるデラウェアと並んで、シャインマスカットなどを初めとする大粒ぶどうが、かなり早い時期から出揃うのだ。
しかも、見たことのないぶどうが何種類もある。品種名をよく見ると、オリジナルの文字がいくつもあった。お客さんは楽しそうに、それぞれのぶどうを試食している。
「人と同じことをやってたらあかん」。そう、ここは知る人ぞ知るオリジナルぶどうを販売しているぶどう園なのだ。ここでは、一般流通は行わず、すべて自園直売所とウェブサイトやFAXからの受注のみで販売している。
門外不出のぶどうたち
中村オリジナルぶどう園のオリジナル品種を一部ご紹介しよう。ジューシーで香り豊かな巨峰系の品種「紫宝」は、その大きさが特徴で、中には一房1キログラムを超えることもあるそうだ。
また「紅しずく」は、非常に皮離れがいい品種で、色は名前の通り淡い紅色をしている。「ハニールビー」は、マスカットのような香りが特徴で、ぶどう通が好むぶどうだ。「すばる」は、ワインのような独特の香りが魅力な大人の味わいを持つ品種である。
まだまだあるのだが、オリジナルの中にとても気になる名前のぶどうがあった。ひらがなで「いちご」と書かれている。まさか、いちごのような味がするのだろうか。期待値が高まってくる。
「あっ、それ、果汁が多すぎるぶどうなんで、送ることができないんです。すぐ割れちゃうんで。水風船みたいなぶどうですよ」。
店頭のみの販売というフレーズにも魅かれる。見た目は、赤みがかったぶどう色である。指でつかんだだけでも果汁の多さが伝わってくる。食べてみると、口の中にぶどうジュースを入れたみたいに果汁があふれた。果肉をかむ暇もなくなくなってしまった。「なんじゃこりゃ」と、思わず心で叫んだ。
オリジナルぶどうのワイン、ぶどうジュースは唯一無二
ここのぶどうを使ったワインも人気商品だ。しかもオリジナル品種のワイン。ぶどうジュースもある。オリジナル品種「紫宝」「ハニールビー」100%使用のワイン。ぶどうジュースをはじめ、10種類以上のラインナップがある。
ぶどうジュースは、G20大阪サミットに使用された。ワインやジュースのラベルは、一俊さんの奥さん作だ。「イラストレーターですが、素人なんで」と一俊さんは言うが、なかなか個性的でかわいいイラストだ。