「一緒に働いている人が、家族やねん」
乾農園では、海老芋以外にも大阪なすと大阪きゅうりを生産している。ハウス栽培1ヘクタール、露地栽培1ヘクタールの合計2ヘクタールをご両親と日本人スタッフ11名、ベトナム人スタッフ4名の「大家族」で経営している。
スタッフが増え、技能も年々伸び、「乾農園」のブランド名で出荷する取引先も多くなり、経営は順調だ。これから、更なる大規模化を目指すのかと思いきや、いまくらいの大家族で丁度いいという。「大家族」と表現するのは、従業員を「従う人」扱いにしたくないから。
ベトナム人スタッフの採用にあたっては現地に渡航し、親御さんとも面談して決めたという。「預かった大切な子どもたちだから」というセリフが、映画「ALWAYS三丁目の夕日」で六ちゃんを受け入れる鈴木一家に重なった。ええ話に目頭が熱くなる。
生でぱくっとミディトマト
海老芋も大阪なすも、生果より「料理してなんぼ」の食材。料理人の腕次第でさらなる境地に上げられる特産品だが、裕佳さんは「調理せずに食べられるものも作ってみたかった」と、今年からトマト栽培をはじめた。近所の農家先輩からの教えもあって、味は良好だ。
味見と称して毎日数個つまみ食いするのが目下の楽しみ。「自分が食べたいものを作るってめっちゃええやん!」改めて農業の醍醐味を感じる日々である。
日記からGAPへ
裕佳さんは、小さい頃から一日たりとも日記を欠かさなかった。友達のこと、恋人のこと、趣味のこと、いろいろ書いてきたが、就農してからは農業に関することがほとんどになっているそうだ。去年の農作業を思い出すときも日記を読みかえす。すると、日記に農作業の貴重なデータが蓄積しされている。全員でデータを共有するために、スタッフも日報を書くようになった。
裕佳さんは次なる乾農園の展開として、GAPの導入を目指している。GAPとはすなわち農業生産工程管理をいう。食品安全や環境保全、労働安全などの持続可能性を確保する取組みのことで、農業界では注目を集めている。
スタッフの責任感や自主性、意思疎通などが改善され、生産や販売にも好影響をもたらすというから、老若男女、多国籍の乾農園には打ってつけだ。
裕佳さんの日記がスタッフにも影響を与え、農作業データを蓄積する文化が根付いている乾農園が、GAP導入を目指すのは自然な流れかもしれない。
「河内伝統農家」を継承
GAP導入など、世界的な動きを取り入れるが、地元河内の伝統技術も守りたい。海老芋栽培でいえば「土寄せ」がその一つ。種芋を植えてから、背丈ほどまで伸びる葉の成長に合わせて畝を順次高くする作業のことだが、なんと収穫まであと4回も作業しなければならない。
海老芋栽培の手間ひまは大変なものである。「関西好み」「関東好み」と土の寄せ方ひとつで海老芋を作り分けることができる熟練の技もある。単なる重労働というわけではなく、一流の料理人が絶賛する西板持の海老芋は、このような伝統技術の継承で守られていくのだ。
さて、乾家のサトイモ料理にはすべて海老芋が使われているという。なんと贅沢な話。鹿児島に行って普通のサトイモを食べた裕佳さんは、味の違いに驚いたという。実家の海老芋が特別なものであったことを、外に出てはじめて知った。「西板持の海老芋だけは絶対やめへん」と熱く語る裕佳さん。すでに「河内伝統農家」の称号が、乾農園4代目に継承されているのを感じた。
取材日 2018/6/11
記 事 福島征二
写 真 ミヤギナミエ
- 氏名 / ふりがな
- 乾裕佳 / いぬいゆか
- 生年
- 1976年生まれ
- 組織名
- 乾農園
- 役職
- 副代表
- 従業員
- 15人
- 主な生産作物
- 海老芋 / 大阪なす / 大阪きゅうり
- 耕地面積
- 2ヘクタール
- JAエリア
- JA大阪南
- 購入方法
-
<飲食店> ORIGIN / フランス料理 : https://www.facebook.com/1831050467147979/
- ホームページ
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乾農園
大阪府富田林市西板持町3-8-2