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「世界一甘い桃」がギネス世界記録に！

「ギネス世界記録」は、世界中で飲まれているアイルランドの「ギネスビール」に起源をもち、日本では「ギネスブック」として広く知られている。高糖度の桃の生産を実現した隆弘さんは、さらなる高みを目指してギネス世界記録に挑戦した。だがギネスには、食品糖度のカテゴリーもガイドラインも存在しなかったので、世界記録に認定してもらうためには基準づくりから始めてもらうしかなかった。

ギネス事務局からはつぎつぎと英文の質問書が届く。早速、岸和田市の中学校英語教諭に翻訳してもらう。隆弘さんの桃の優れた点を説明する論文や世界に通用する測定方法、栽培方法の妥当性など、ありとあらゆる合理的な説明が求められていた。

立ちはだかる巨大な壁のような難題であったが、続々と支援者があらわれる。大阪府の農業担当職員や、つくばの果樹研究所の研究者、農林水産省の職員から支援を受け、一人ではクリアできなかった難題を解決することができた。さまざまな苦労や支援が実を結び、ギネスに挑戦して３年後の2015年に糖度22.2度の「世界一甘い桃」としてギネス世界記録に認定されたのだ。隆弘さんはいまも世界記録保持者である。

泉州音頭の音頭取りにだんじり祭り

桃のシーズンが終われば盆踊りシーズンがはじまる。隆弘さんは泉州音頭保存会「政若会」に所属する音頭取りだ。左手にマイク、右手に扇子、太鼓とギターの伴奏に合わせた軽快な語り口調に定評がある。通称「水間観音」といわれる天台宗別格本山の水間寺で開催される「水間愛染踊り」をはじめ、泉州各地の盆踊り17カ所を巡回する。

盆踊りが終わると、次はだんじり祭りだ。岸和田のだんじりといえば、角を勢いよく曲がる「やりまわし」や屋根の上の「大工方」が有名であるが、総欅造りの地車（だんじり）に施された彫刻も各町自慢の一つである。包近町の地車には、楠木正成が包近八幡宮に戦勝祈願した秘話など、楠公の物語が彫刻されている。特筆すべきは、木鼻に彫られた獅子が桃を咥えていたり、番持ちと呼ばれる人型の彫刻に桃仙人がいたりと、桃の名産地だけあって桃が随所に彫刻されていること。

包近町をはじめ岸和田山手のだんじり祭りは「十月祭礼」といわれ、毎年10月初旬の土日に開催される。隆弘さんはじめ、地元岸和田人の熱気にふれることができるだんじり祭りを、ぜひ機会があれば肌で感じていただきたい。

だんじり祭りが終わっても、今度はバクタモン栽培のミカンの出荷がはじまるので、隆弘さんの一年は休み無く大忙しである。

大人気の桃がこんなに味わえる

隆弘さんの桃やミカンは、今や大人気だ。桃がギネス世界記録に認定されてから、農園直営のネット通販では予約開始から数時間で完売する。なかでもよく知る人は「桃の皮に、おいしい印の点々が入っている」と選ぶツウの人もいる。

数は限られるが、地元の農産物直売所「愛彩ランド」をはじめ、大丸心斎橋店や日之出屋堺駅南口店でも購入可能。また、加工品も人気を博している。マルヤファームのオリジナルの桃ジャム、ジェラート、桃の酵素液「桃の妖精」なども販売されている。

さらに大阪北浜の洋菓子店「五感」ではスイーツの主材料になり、全国の生産者とネットワークを築く銀座のバー「Misty」ではオリジナルカクテルになったりしている。そのように「世界一甘い桃」を味わえる場所もあるので、詳しくはマルヤファーム・プラスのＨＰを参照してほしい。

最後に一言「大阪はくいだおれの町。うまいもんがぎょうさんつくられとる。うちの桃も、くいだおれの町のうまい桃として、世界中から食べに来てほしい」と隆弘さん。「岸和田の包近に、この人あり」の桃生産者である。

取材日　2018／6／24

記　事　福島征二

写　真　ミヤギナミエ

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