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大阪府とJAが連携して展開する「経営強化チャレンジプロジェクト事業」。DIYでスマート農業機器の導入を支援する制度を活用して、新しい農業の可能性を模索する胡蝶蘭農家・ねばーらんどさんへ訪問して、お話を聞きました。

 

■スマホでいつでもどこでもハウスを確認◎

「この装置、農薬の袋を再利用しているんですよ」。胡蝶蘭が咲き乱れるハウスの中で、ねばーらんど代表の岡田さんが説明してくれたのが、温度を感知するためのセンサー機器。ハウス内に数カ所設置してあり、その情報を集約する機器もまた手作り感のある仕様です。

 

ハウス内の温度は15分間隔で記録され、そのデータは岡田さんが肌身離さず持ち歩いているスマホでいつでも確認できるという仕組みになっています。胡蝶蘭の開花タイミングを左右するのが蓄積温度で、その数字を常に把握しておくことができるようになりました。

 

■大阪府×JA|スマート農業機器自作支援事業

このシステムは、岡田さんが大阪府とJAの協働によるスマート農業機器自作支援事業の公募に申し込んで採択され、導入したものです。DIYによるスマート農業機器の製作や導入を支援し、農作業の省力化や農産物の高品質化、生産量向上を図り、府内の農業者の経営改善を目指す事業です。

「たまたまテレビで見たスマート農業普及を推進する番組で公募のことを知り、自分にもできそうだと思ってすぐJAさんに連絡したんです」。泉南市のハウスから車で30分の岬町に住まいと圃場を持つ岡田さんは、なにかが起こった時にすぐに様子を見ることができないことが気がかりでした。そこで、温度に的を絞ってスマート農業にトライしてみようと考えたのです。

 

■低コストでスマート農業導入!?

八尾市在住でねばーらんど隣りのハウスで紫陽花、クリスマスローズを栽培するフジタナーサリーの藤田さん。岬町でいちご農家を経営する息子さんに話を持ちかけ、府内在住の農家3名以上という補助金申請要件もクリア。同じく温度管理が重要な農家同士が情報を共有することで、異常な温度が計測された時に近くにいる誰かが対応してダメージを回避できます。

 

今回のスマート農業導入にあたっては専門家のサポートもあり、DIYした機器ではセンサーケーブルのみ1万5千円。「スマホを新しくしたので、そこは10万円超えたけど(笑)」と話す岡田さんは、何百万という高額な設備を導入しても、工夫をしないで結果を機械のせいにしてしまっては自分が成長できない場合もあると話します。コストをかけずに簡易なところからスタートし、自分なりの工夫を加えて、できる範囲を増やすことに取り組みます。「変化の大きいこの時代。DIYを通じてより効率的な農業をしようと工夫を重ねることで、ノウハウを蓄積できるとともに、変化に対応できる柔軟な発想が得られる。これは農業経営において非常に重要なことです。」と岡田さん話します。

 

■30代からのスタートを振り返って

そんな岡田さんが農業を始めたのは33歳、父から受け継いだ岬町の300坪の農地からのスタートでした。その規模で収益をあげられる作物を探していて、たまたま出会ったのが胡蝶蘭。試行錯誤で取り組む中、かるがもの里の設立に関わる人との出会いがあり、「がんばっているとわかったから」と声をかけてもらい、現在の農地での運営が始まりました。「他に選択肢はないと考えて始めた胡蝶蘭栽培ですが、教えてくれる人や協力してくれる人がいて、今があると思っています」と話します。

 

周囲の協力も得ながら積極的に学んで知識を増やし、能力アップを追求することが農業経営の未来につながると考えている岡田さん。大阪での農業経営について、事業化していく場合は農地面積が大きくて行政のサポートも手厚い隣接エリアを選び、消費地として大阪を活用するのが有効だと考えています。また、技術面・経営面に長けた人材が豊富に存在することが大阪の強みであり、このような人的資源の活用に加え、スマート農業の導入により農業を始めやすい仕組みを作ることが、農業の担い手を増やすことにつながるとも語ります。

 

■次世代につなげる農業の入り口を!

 

そして、若い世代に農業の魅力を感じてもらい、参入のハードルを下げるのがスマート農業の役割と捉えています。「これまでは紙ベースのデータに勘を加えて行っていた部分を、正確なデータを取ることによってすべての行動に活かせます。工夫したことの結果が明確になり、成長につなげることができます」。他の農家とデータを共有し、連携することで次の展開を広げていくこともできるスマート農業に大きな可能性を感じていることが伝わりました。

 

未来の農業について展望を語る岡田さんが紹介してくれたのが、今年、農業大学を卒業して入社したスタッフ・岩田さん。「花に関わる仕事がしたくてねばーらんどに入社しました。これからの農業をやっていくにはデータを取り入れていかないといけないと思います」との頼もしいコメントにニコニコする岡田さん。指導するにもデータを元に話ができるのはとても有益とのことで、ここでもスマート農業が役に立ちます。

 

「一生懸命に学ぶ姿勢があると応援したくなる」と、農業の入口で自分が受けた励ましをそのまま新しい世代に返している岡田さん。データと熱い想いが農業を次世代につなぎ、明るく照らします。

 


[取材ご協力先]

ねばーらんど代表 岡田 茂さん

代表理事を務める泉南市の農事組合法人「かるがもの里」で、胡蝶蘭の生産・販売を行う「ねばーらんど」を運営。今回のスマート農業の導入など、積極的に新しい農業の形を追求しています。

胡蝶蘭のねばーらんどのホームページはこちらから

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