3年前までは一消費者
「3年前までは一消費者でした」。浦田大志さんは新規就農者だ。2016年に羽曳野市の藤井農園に雇用就農した後、17年より熊取町、富田林市で『しばファーム』を開園した。現在は、富田林市と熊取町に農地を借りて、とくにミニトマトに力を入れて栽培している。
「しばファームのシバは、ネパールの神様のシヴァから取りました」。ヒンドゥー教では最も影響力を持つ3柱の主神の中の1人で額に第三の目があるというシヴァである。
農家になる前は、花屋、保険や不動産の営業を経験した。その後、ネパールに旅をしたことがきっかけで、農家になることを決めた。「ネパールはなんでもありや」と思ったのだ。「物質的な豊かさより、精神的な豊かさを求めているでしょ。そうだ。好きなことをしよう」。植物好きだった浦田さんは、好きなことを考えたら農家に行きついたのだ。
ミニトマトが実った畑で浦田さんは、「めっちゃええトマトができたんですよ」とトマトをもいでくれた。
きつい日差しの中、サウナ状態のハウスでいただいたミニトマトは、甘くてうまみがあっておいしかった。カメラマンは「もう、一個食べていいですか」と言いながら、何度もうまいと繰り返した。糖度は9度から10度はあるそうだ。酸味があるからこそ、うまみとコクがでるのがトマトだ。
目標は「あの人のトマトだ」と、大阪の農業界では、名の知れた農家さんの名前を出した。「あの人は農家歴20年、僕は3年目だけど、負けたくない」。『しばファーム産トマト』のブランド力を高めるために、今、その背中を懸命に追っている。
農家になる前に大阪市内で買ったトマトは美味しくなかった。「ぶっちゃけいうと、ぜんぜんうまくなかった。遠いところから取り寄せているでしょ」と浦田さん。3年前までは、一消費者だったからこそできる農業があると考えている。都心でしかできない農業のカタチがあるはずだ。
自分で作ったトマトを持って売り歩ける
「僕は元々、営業をしていたし、自分で作ったトマトを持って売り歩けるタイプなんですよ」と頼もしい。人見知りはしない。「トマトは、試食してもらったら一発でオッケーでしょ」とトマトの味にも自信が出てきた。
前職の保険の営業経験があるから、営業は得意だ。保険の営業は見えないものを提案しなければならないが、農産物の販売は目に見えるし、味も見てもらえるので、ずっと楽だそうだ。
夜も畑のことを考える
「夜中に水遣りのことが気になって、クルマで畑にいくこともあるんです」。トマトがかわいくて仕方がないようだ。浦田さんの作る農作物のターゲットは、高級野菜を扱う青果店だ。高品質のものを栽培しなければ扱ってもらえないが、そのために常に技術の向上をめざして勉強している。尊敬する農家を訪問することもあるそうだが、どの農家も快く迎え入れてくれるそうだ。
トマトは5~7月に富田林の畑で、キュウリは品薄になる8月を狙って熊取で露地栽培をしている。空芯菜にも力を入れている。9~10月はミニいちじくを栽培する。イチジク栽培は、最初に雇用就農した「藤井農園」のミニ版、「ミニ藤井農園」を目指している。ミニイチジクはまだ市場にはあまり出回っていないが、糖度が高く濃厚で、レストランや和菓子、洋菓子などにも利用が期待されそうだ。
それら作る農作物に合わせて、土を改良し、肥料を工夫している。