近年、農業体験が注目を集めている。
旅行客や子どもに手軽に体験してもらえるものから、就農希望者に向けた本格的なものまでさまざまな体験があり、農作業を通して自然や農業の素晴らしさを体感できると好評だ。
以前いちじく農家としてご紹介した藤井農園でも、じゃがいもの収穫体験をはじめさまざまな農業体験を行っている。そのなかでも新たに立ち上げたのが、今回紹介する「じゃがフェス」だ。
自分たちの育てた野菜が商品になる
「じゃがフェス」は、土づくりから始め、栽培したじゃがいもを収穫後にポテトチップスにして食べるまでをパッケージ化したイベントだ。元々行っていた農業体験の中でも特に人気の高かったじゃがいも掘りから、「収穫の先にある、育てたじゃがいもを商品化するところまでを体験することができるとさらに面白いのでは?」と発想したそう。
近年注目を集めているデジタル「クラウドファンディング」も臆さず活用。
イベントの実現までに一番大変だったのは、資金集めだったと藤井さんは振り返る。
もし参加者が集まらなかったら赤字確定。そこで思いついたのが、近年注目されている手法のひとつであるクラウドファンディングだった。
クラウドファンディングとは、インターネットを介して「こんなモノやサービスをつくりたい」といったアイデアを発信し、それに共感し、支援してくれる不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達するサービスのことで、映画制作などで多数の成功例がある。
「クラウドファンディングをすることで藤井農園の認知度アップにもつながるし、需要のあるなしがはっきりわかる。勝負してみよう」。意を決し、実施に踏み切ったのだ。
面白いから集客できるはず!と自信を持ってスタートしたものの、開始当初は予想を裏切り人はあまり集まらなかった。イベント(じゃがフェス)の期間が長いことや、複数回の開催になることなどが、参加に結び付かない原因だったようだ。だが、そこで簡単に諦めないのが、藤井さんだ。
残りわずかな時間も無駄にしないように、町内イベントなどに自ら出向いて告知活動を行った。必死の告知の甲斐あって、期日の3日前に目標金額である120万円に到達。無事開催にこぎつけることができたそう。
「正直開催できるかどうかヒヤヒヤしましたね」と笑うが、彼の「面白いことをやりたい!」という信念が、多くの人々の心に届いたのだろう。
オプションもてんこ盛りな、まさに“フェス”!
こうしてスタートを切ることになった“じゃがフェス”。全貌は以下の通りだ。
第1回は土づくり編。第2回は畝(うね)づくり編、第3回はじゃがいも植え付け編、そして最後にじゃがいも収穫編と、約半年間でひと通りの生産の流れを体験できるようになっている。さらに各イベントにはさまざまなコンテンツが盛り込まれ、まさに“フェス”といえる内容となっている。
例えばトラクターの運転体験や機械でのマルチシート張り体験など、追加で体験券を購入した人が参加できるプランや、農作業の後に楽しめる焼き芋体験など、普段はできない農業体験ができるようオプションを充実させた。ほかにも、さつまいものハンコづくりや、手焙煎したコーヒーを淹れるワークショップなども構想中。極めつけはすべての体験が終わった後に開催予定のポテトチップス試食会&動画の完成披露試写会。このイベントは藤井農園の野菜を取り扱っている大阪市内の居酒屋「梅田チューハイ35」に協力を仰ぎ、場所を提供してもらって開催する予定だとか。
想像するだけでも楽しそうなイベントの数々。藤井さんの企画力の賜物かと思いきや、「周りの皆さんの協力ありきです」と首を横に振る。聞けば、じゃがフェスは本当にたくさんの人たちの手でつくり上げられていた。