三世代9名で営む、おひさまファーム
向かったのは、寝屋川市 高柳の住宅街。そこに農産物の直売所「おひさま野菜 拓」がある。出迎えてくれたのは、店長の滝本拓馬さん(31)、拓馬さんの母多美子さん(61)、祖父の信夫さん(88)。三世代3人を前にしてのインタビューとなった。
「農繁期には、姉夫婦、弟夫婦も手伝ってくれるんです」という拓馬さん。おひさま野菜 拓を運営するのが「おひさまファーム」。おひさまファームは、拓馬さんと拓馬さんの祖父、両親、妻、姉夫妻、弟夫妻合わせて9名三世代の農家からなる。
旬のものしか並ばない直売所
おひさまファームの農地は、田んぼが90アールと畑が30アール、里山が60アール。そのほかにJAを通して近隣の稲刈り代行60アールほどを受託している。自家製のもみがら堆肥やバーク堆肥*で土づくりをし、春に咲いたレンゲも土に還す。化学肥料や農薬を極力使わずに栽培したお米は、大阪府のエコ農産物の認定を取得している。
*バーク堆肥とは、樹皮(bark、バーク)を原料とした有機質肥料。
おひさまファームで収穫した四季折々、旬の野菜や果物は直営の直売所おひさま野菜 拓で販売される。おひさま野菜 拓は住宅街のど真ん中、滝本さん一家が大家を務めるマンションの1階スペースにある。
近年、法改正がなされ、生産緑地における直売所や農家レストランの運営が可能となったが、おひさま野菜 拓の開設は10年前。拓馬さんが農業を継ぐタイミングで、マンション1階を直売所にした。「野菜はここでしか買わない」と通う、ご近所の熱烈なファンも少なくないという。
畑まで、直売所から直線距離で100メートル
寝屋川市農産物品評会では、祖父信夫さんも拓馬さんも、大阪府知事賞や寝屋川市長賞を受賞する腕前。栽培品目をたずねると、トマト、ナス、キュウリ、ホウレンソウ、コマツナ、ニンニク、イチゴ、エンドウマメ、サトイモ、キャベツ、ハクサイ、カブラ、ミカン、カキ、ハッサク、タケノコ、イチジク、ジャガイモ、と全品目は数え切れそうにない。総数をきけば、その数およそ70品目とのこと。
「うちは、朝採れにこだわっています」。収穫は、夏は朝4時半頃から、冬は6時頃から。直売所には、朝採りの新鮮な野菜が並ぶ。売れ行きが良い日は、夕方にも収穫して並べる。農園は直売所から直線距離にして100メートル。フードマイレージ*の数値の低さは、ピカイチだ。
*フードマイレージとは、食料生産地と消費地の近さ/遠さを表す指標。遠い(数値が高い)ほど食糧輸送に伴う環境負荷は大きい。
もと水田だった田んぼを、拓馬さんは畑に変えた。「米の収穫は年に1回。米だけでやっていくには、面積が必要でした。野菜なら周年栽培、出荷が可能です」。拓馬さんは、大学では経営学を学んだ。
野菜栽培の技術は、農業の先輩である祖父信夫さん、去年亡くなった祖母洋子さんから受け継いだ。拓馬さんが栽培を始めたアボカドやスティックセニョール、アスパラガス、なにわ野菜の鳥飼ナス、生落花生などは、祖父の指導を受けながら試行錯誤が続く。