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できません、は辞書にない。やる。楽しんで、やる。

奥朋子さん

( おくともこ / 奥農園 )

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正月は、杵と臼でペッタンペッタン。もち米は、水道水で栽培した超高級もち米である。都市化の進行で水路がなくなり、約3アールの田んぼに水道水を敷く。寄ってくれた人みんなで餅をつき、丸めて、いただく。「今年は、50人くらい。バングラデシュから参加してくれた家族もいたのよ」。

春には、タケノコ掘り。「タケノコ掘りって難しいのよ。義父がずっとそばについて、手とり足とり教えてくれたの。亡くなる前に、免許皆伝してあげると笑顔で言ってくれたのが一番の思い出なのよね」。

タケノコは茹でるのが本当に手間だ。そんな時、大きな鍋がある奥農園の土間が大活躍。タケノコは、掘って直ぐ皮つきのまま水から茹でる。沸騰して45分。火からおろし、すぐ水につけ、皮をむき、流水にさらす。薄皮をとり、綺麗に掃除して、流水に1日半から2日浸す。瓶に詰め、また鍋に入れ、沸騰して45分。すぐに取り出し、蓋を閉めると、瓶は脱気でき、2年は保存できる。この大変な作業を仲間みんなでワイワイとこなしていく。

「過酷な作業なのよぅ」という、チームともちゃんの声が聞こえるが、実に楽しそうである。大変な思いをして茹でたタケノコで炊いたタケノコご飯は絶品。こちらも、みんなで分けていただく。佐井寺のタケノコを守り、地域の方に初モノを食べていただきたいという思いから、タケノコ料理講習会も実施している。

「佐井寺が、タケノコの産地だったことを忘れてほしくないし、次世代にも伝えたいのよ」。

夏には、七夕用の竹の笹を、近所の幼稚園、小学校や欲しい人へプレゼント。四季折々の旬の野菜は、畑の真横にある直売所のほか、南千里のスーパーマーケットや飲食店と直接取引している。辛味大根の「カザフ」は蕎麦屋に卸している。このカザフは、わさびの香りがすると好評だ。

JA北大阪のデイサービスや吹田母子会の陽だまりルームに、旬の野菜を提供することもある。朋子さんの料理とおしゃべりを、たくさんの利用者が楽しみにしている。「朋子さんが来れない日は、写真を見ると元気がでる」という声もある。デイサービスや陽だまりルームへ通うのが、朋子さんのライフワークの一つになっている。

祐次さん情報である。朋子さんが大根を収穫しにいくと帰り途にある店や友人に分けてしまい、自宅に着くまでの間にすべてなくなることも珍しくないという(笑)。ハチャメチャにも聞こえるが、そこから、人に美味しい野菜を食べてもらいたいという朋子さんの思いは経済に優先することがわかる。大根を分けた店や友人はやがて取引先やサポーターとなる。結果、奥農園の新しい仲間がまた、増えていく。

野菜の食べ方、人の生き方

都市農業の魅力を、朋子さんにたずねてみた。「農薬を使わずに育てた採りたての野菜の美味しさと食べ方を教えてあげられることよ」と。

「タケノコの天ぷらは、味付けしたタケノコでやったほうが美味しいってことも知らない人が多いのよ。大根の葉っぱは、いらないなんていう人がいたら、食べかたを教えてあげるの。お客さんに美味しそうなものを選んでって頼まれたら、自分で選びなさいって、選び方を教えてあげるのよ。お互い、口上を楽しまなきゃ」。とにかくガンガン打って出るスタンスで、販売しながら、朋子さんは、食農教育をしている。

近所の小学校では、生活の授業の先生としても活躍する。「野菜の育つ姿をみて、生きることの素晴らしさや命というものを知ってもらいたいの」。サツマイモ堀り、大根ぬき、じゃがいも掘りなど、畑が子どもたちの教室になる。種イモに灰をつける理由、なぜマルチ*をするのかなど、子どもたちに考えてもらう。

*マルチとは、畑のうねをわらやシートで覆うこと。保温、病害虫の発生防止、雑草防止が期待できる。

農薬を使用しない有機栽培の奥農園の畑には、アオムシがたくさんいる。「アオムシ、いつでも入ってとっていいよ」と畑は、近所の小学生たちに、いつでもオープン。子どもたちがせっせとアオムシをとってくれたおかげで、キャベツやブロッコリーの虫喰いは減り、春のある日、小学校の職員室や多くの家の中でモンシロチョウが乱舞したという笑い話もある。

元気な野菜で、人も地域も元気にしたい

「先祖から受け継いだ農地を少しでも守り、次の世代へ繫いでいきたい。自分たちの食べるものは自分でつくりたいし、安心安全で元気がでる野菜をみんなに食べてもらいたい。健康は元気な野菜から」という朋子さん。

奥農園の仲間のみならず、地元をまきこむ求心力。そこには、みんなが笑顔で声をかけあい、明るい元気な地域になるように、という朋子さんの熱い思いがあった。

取材日 2018/12/27

記 事 中塚華奈

写 真 柴田久子

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氏名 / ふりがな
奥朋子 / おくともこ
生年
1955年生まれ(63歳)
農家歴
37年 / 1981年より就業
前職 / 出身校
中学国語教師 / 甲南女子大学国文学部
組織名
奥農園
従業員
祐次さん+朋子さん+お子さん2人+サポーターのメンバー
主な生産作物
タケノコ、笹、野菜、もち米、キンカン、ハッサク、ミカン、レモン、せとか、柿、干し柿、梅など
正式な品種名
キタアカリ(ジャガイモ)、もみじ(タマネギ)、アヤメユキ(カブ)など
耕地面積
畑60アール+竹やぶ+田3アールほど
特徴
完全有機栽培(無農薬、無化学肥料、ぼかし肥料で栽培しています)
理念
楽しく、笑顔が作る無農薬の新鮮野菜は元気のもと!!
JAエリア
JA北大阪
購入方法
直売所(吹田市佐井寺3丁目5 新池公園よこ) : https://goo.gl/maps/pMwuR7udxC22
尼崎ASC青空市(JA兵庫六甲塚口支店前)第三土曜日14時~ : http://www.jarokko.or.jp/Contents/Map/AccessMap/0156.htm
年に1回の吹田母子会まつり

奥農園

大阪府吹田市佐井寺

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