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守る覚悟と逆算の農業。空手も極める、勲章農家。

東口正一さん・進さん

( ひがしぐちまさかず・すすむ / 兼業農家 )

  • 泉北
  • JAいずみの
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農業も、空手も、地域貢献

東口正一さんが経営する不動産会社、東口不動産は高石市取石(とりいし)にある。事務所には、さまざまな分野で功績を残した人へ送られる旭日単光章*(きょくじつたんこうしょう)の褒章額が飾られていた。「今年5月に皇居へ行ってきまして」と誇らしげに語る正一さん。令和元年に授与されたばかりの賞状だ。

*旭日単光章とは、社会の各分野で顕著な功績をあげた者に授与される日本の勲章。

地元の自治会長を務め、40年近く農業委員会の委員を務めた。現在は高石市農業委員会長をしている。地域と農業に貢献してきた功績がこのたびの受章に繋がった。「長いことやっているだけや」と謙遜するが、長くやり続けることがどれほど大変なことか。

正一さん、進さん親子は、米農家である。高石市取石地区の農地を代々守り続けてきた。進さんは語る。「小っちゃいときから田んぼに行ってました。田んぼに行かないと両親に遊んでもらえなかったんで」。物心ついたときから田んぼが遊び場だったそうだ。田んぼに行かないと忙しい両親に会えなかった。進さんには、田んぼともうひとつ、父にかまってもらえる場所があった。空手道場だ。

父は九段、子は七段、空手道を極める

父、正一さんは、不動産業をしながら農業をする兼業農家だが、もうひとつの顔がある。日本空手道三原会会長であり、三原会九段である。

「遊びに行くとしたら田んぼか、空手の道場しかなかった」。その進さんも、正一さんと同じく空手の道を極めている。日本空手道三原会七段、全日本空手道連盟五段、全国組手審判員、地区形(かた)審判員、錬士3級資格員(審判の先生を審査する)と、数多くの資格を取得している。

道場は無料、ずっと世話になっているんでね

正一さん、進さんの「三原会本部道場」では、空手を無料で教えている。「ずっと、地元の世話になっているんでね」と。「やんちゃな子がようけ来るけど、道場に来たらケンカせえへんようになるで」と正一さん。「ナッキーも、うちの道場や」。ナッキーとは、元空手の世界チャンピオンで、現在は競艇選手として活躍する藤原菜希さんだ。

この日、田んぼに来ていた正一さんの孫(進さんの甥、妹さんの子ども)で中学3年生の田上二朗くんもまた、空手の全国大会に出場するなど優秀な成績を残している期待の星だ。

れんげが、自然と咲く田んぼ

「うちの田んぼは、自然にれんげが生えてくるんや」。田んぼで育てられているのは「れんげ米」、れんげ草と共存して育つ米だ。東口さん親子は10年前から田んぼにれんげ草を植え始めた。田植え前の5月頃には一面、紅紫色の花が地面に広がって咲く。

昭和30~40年代頃までは、春になるとそこらじゅうの田んぼにれんげ草が咲く風景があった。れんげ草は自然に咲いたと思う人が多いかもしれない。じつは農家が咲かせていた。

マメ科の植物であるれんげ草は根っこに「根粒菌」を住まわせている。根粒菌は空気中の窒素を植物の栄養に変える働きをしている。れんげ草全体が、窒素をたくさん蓄えた肥料のようなものだ。最初のうちは、9~10月頃にれんげ草の種を撒いていたが、今では、自然にれんげ草が生える田んぼになった。

「れんげ草の種を撒かんでも、れんげが生えるんや。種が自然にできるようになるまで我慢せなあかん」。苦労もある。「れんげはトラクターの後ろに巻き付くんで、なかなかみんな植えたがらない」。れんげ草を撒く前に比べ、肥料をやる回数は減った。肥料を撒くのが一回減るだけで、労力はだいぶ違うと進さんは言う。

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